結論から言うと、Nottaの日本語精度そのものより先に効くのは単語登録(辞書)を何個まで持てるかです。公式ページの記載では、フリーは3個、プレミアムは200個、ビジネスは1,000個。そして単語登録は日本語の文字起こしでしか使えないと公式が明記しています。社内用語が10個以上ある人は、無料のまま精度を語っても始まりません。
「98.86%」には、公式自身が但し書きを付けている
Nottaの料金ページのFAQには、精度についてこう書かれています。
フォーマルな会議など、整然とした発言が行われる場合には、認識率は98.86%以上となります。※収音が困難な場合は、認識精度に影響を与える可能性があります。
読むべきは前半の数字ではなく、「フォーマルな会議など、整然とした発言が行われる場合には」という条件のほうです。精度向上ページでも、実際の精度は「話し方や音環境により大きく変わります」と書かれています。
つまり公式の説明の順番は、エンジンの数字 → 収音の条件 → 語彙の登録です。録音側でできることは文字起こしの精度を上げる録音のコツにまとめたので、この記事では最後の「語彙」だけを扱います。
専門用語が崩れるのは、辞書に無いから
Nottaの精度向上ページは、専門用語についてこう説明しています。
専門用語や固有名詞が含まれる文章の文字起こしは正確に文字に起こされないことがあります。これらの用語は特定の分野に関連しており、一般的な辞書や一般的な知識だけでは音声認識が困難です。その場合、単語登録機能を使用することをおすすめします。
対処は「読みと表記を登録します」というシンプルなもので、社名・製品名・部署の略称・人名のような、一般辞書に載っていない語を先に教えておく方式です。裏を返すと、登録していない用語は録音環境をいくら整えても当たらないということでもあります。
そして同じページに、見落とすと効かない条件が2つ書かれています。
- ※単語登録機能は、日本語の文字起こしのみ利用できます。(公式の注記)
- 登録できる数はプランで決まる。フリープラン:3個まで/プレミアムプラン:200個まで/ビジネスプラン:1,000個まで/エンタープライズ:カスタマイズ可能
英語会議の固有名詞を登録して直す、という使い方は公式の注記の範囲外です。日本語の会議で社内用語をつぶす用途に限られます。
他社の「用語登録」と並べると、Nottaの位置が分かる
同じ「専門用語を登録して精度を上げる」機能でも、条件はサービスごとにかなり違います。公式ドキュメントに文言として書かれていた数字だけを並べました。
| サービス | 登録できる数 | 日本語での可否 | 誰が設定するか | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| Notta 単語登録 | フリー3個/プレミアム200個/ビジネス1,000個 | 「日本語の文字起こしのみ利用できます」 | 利用者本人 | Notta 精度向上ページ・料金ページ |
| Zoom カスタム辞書(ZoomMate) | 「Add up to 1000 terms, with each term limited to 256 characters」 | 「English (US) is currently the only supported language」 | 「Admin or account owner privileges」 | Zoom サポート(AI Studio) |
| Azure AI Speech フレーズリスト | 「フレーズ リストに含めることができるフレーズの数は 500 以下です」 | 日本語ロケールで使えるかの明記は今回見つけられなかった | 開発者(SDK/CLI) | Microsoft Learn |
| Google Cloud STT モデル適応 | 1リクエスト5,000フレーズ/1フレーズ100文字/合計100,000文字 | 対応状況は言語サポートページ参照とあり、今回は確認できなかった | 開発者(API) | Google Cloud ドキュメント |
表で目立つのは、Zoomのカスタム辞書は現時点で対応言語が英語(米国)だけと公式に書かれていることです。しかも設定できるのは管理者か所有者で、必要なのはPro以上のプランに加えてZoomMateライセンス。Zoomの会議を日本語で議事録にしたい個人が、この機能で用語をねじ込むルートは今のところ用意されていません。Zoom側でできることの範囲はZoom録画の文字起こしに書いたとおりです。
AzureとGoogleは登録できる数こそ桁違いですが、どちらも開発者が自分のコードから渡す前提の機能で、会議のたびに画面から単語を足す運用とは別物です。
なお日本語の同種サービスでは、Rimo Voiceも公式サイトに「業界特有の専門用語や社内用語を登録することで、文字起こしの精度を更に高めることができます。」と書いています。ただし登録できる数と対応プランの記載は見つけられなかったので、表には数字を入れていません。
判断軸は3つ
1. 登録したい用語が何個あるか
これが最初の分かれ道です。手元の議事録から固有名詞を書き出して、3個で収まるならフリーのままでいい。20個あるならフリーの3個では足りず、プレミアムの200個が現実的な受け皿になります。1,000個が必要になるのは、部署ごとに用語体系が違う規模の会社です。
数える対象は社名・製品名・社内の略称・頻出する人名で、一般語は最初から当たるので数えなくて構いません。
2. 会議の言語が日本語か
公式の注記どおり、単語登録は日本語の文字起こし向けの機能です。英語や中国語の会議が中心なら、この機能を理由にプランを上げる判断はできません。英語会議の固有名詞対策としては、Nottaの単語登録に期待せず、録音の質を上げるほうへ寄せることになります。
3. 自分で設定できるか、管理者を通すか
Nottaの単語登録は利用者本人が読みと表記を登録する形式で、承認の手続きは挟みません。対してZoomのカスタム辞書は「Admin or account owner privileges」が要件です。情シスに依頼を出さないと1語も足せないのと、自分で3分で足せるのとでは、実務での使い勝手が変わります。
正直な短所
Notta:単語登録の個数がプランに直結していて、フリーの3個は実会議には足りない場面が多いはずです。さらに料金ページのプランカードでは、単語登録がプレミアムの「すべてのフリー機能+」の側に並んでいる一方、同じページのプラン比較表ではフリー欄が「3単語」になっています。どちらの書き方も公式ページ内にあるので、フリーで実際に何個登録できるかは申し込み前に自分のアカウントで確かめたほうがいい部分です。加えて、登録は日本語限定という注記があります。無料枠そのものの詰まりどころはNotta無料プランの制限に整理しました。
Zoomのカスタム辞書:対応言語として挙がっているのが英語(米国)だけで、追加言語は将来の更新予定という書き方です。日本語会議での用語対策としては現時点で選びづらい。
AzureとGoogle:語彙の上限は大きいものの、使うにはコードを書く前提です。Azureのフレーズリストは公式が「バッチ文字起こしでは利用できません」と明記しているなど、適用できる経路にも条件が付きます。
共通:どのサービスの辞書も、登録すれば必ず当たると保証するものではありません。Nottaの説明も「認識精度が向上します」という書き方で、置換の約束ではない点は押さえておくべきです。
よくある質問
Q. Nottaの単語登録は無料プランでも使えますか。 公式の精度向上ページには「フリープラン:3個まで」と書かれ、料金ページのプラン比較表でもフリー欄は「3単語」です。ただし同じ料金ページのプランカードでは、単語登録がプレミアムの追加機能として並んでいます。記載が2通りあるため、無料のまま使い切りたい場合は登録画面で実際の上限を確認してください。
Q. 英語の会議でも単語登録で精度を上げられますか。 Nottaの精度向上ページには「※単語登録機能は、日本語の文字起こしのみ利用できます」と注記があります。英語会議での利用を前提にしたプラン変更はおすすめしません。
Q. 単語登録とプラン変更、どちらを先にやるべきですか。 先に登録したい用語を数えるのが順番です。3個以内なら支払いを増やす理由がありません。数が超えたときに初めて、年払いと月払いのどちらが得かという話になります。分岐点はNotta料金の年間プランと月払いの比較にまとめています。Nottaの料金と無料枠は改定されることがあるので、申し込み前に公式ページで最新の数字を確認してください。
まとめ
- 精度の話は「エンジンの数字」より、登録したい用語が3個で収まるかという具体的な数から始めたほうが早い
- Nottaの単語登録は公式記載でフリー3個・プレミアム200個・ビジネス1,000個、そして日本語の文字起こしのみという注記付き
- Zoomのカスタム辞書は1,000語まで登録できる一方、公式に挙がっている対応言語は英語(米国)のみで、設定も管理者権限が必要