結論から言うと、あとでAIに文字起こしさせる前提なら、見るべきは「音の綺麗さ」より録った音をそのままAIに渡せるかです。パソコンに直接挿せる普通のICレコーダーで足りる人が多数派で、機器の中で文字起こしまで完結させたい人だけ一体型を検討する。この順で考えると失敗が減ります。
ICレコーダーの製品ページには、そもそも「文字起こし」がほとんど出てこない
ソニーのICD-UX570Fシリーズの主な仕様ページと特長ページを読みましたが、文字起こしやテキスト化に関する記述は見つけられませんでした。付属品として挙がっているのは「パソコン用ソフトウェア『Sound Organizer 2』(本体メモリーに内蔵)」「キャリングケース」「取扱説明書」「保証書」です。OM SYSTEM の Voice-Trek V-873 も、主な仕様に書かれているのは「MP3形式」「内蔵型NAND FLASHメモリー 8GB」といった録音側の情報だけでした。
つまりICレコーダーは今も音を録って渡すための道具で、テキストにするのはAI側の仕事という役割分担になっています。これを踏まえると、選ぶ基準は「議事録が自動で出てくるか」ではなく「渡すまでの手間がどれだけ少ないか」に変わります。
一方で、録音とAI文字起こしを一体にした製品も別カテゴリとして存在します。こちらは本体代のほかに文字起こしの月額枠がセットになっているので、買い方そのものが違います。
3つのルートを、公式に書かれている数字だけで並べる
| ルート | 本体の費用 | 文字起こしの費用 | 録音ファイル | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| ICレコーダー+AIサービス(ソニー ICD-UX570F) | オープン価格(公式ストアに価格表示なし) | 使うAIサービス側の料金 | リニアPCM/MP3 | 音源も手元に残したい人 |
| ICレコーダー+AIサービス(OM SYSTEM V-873) | ¥9,240(税込・公式ストア) | 使うAIサービス側の料金 | MP3のみ(128/64/8kbps) | 電池式で長時間まわしたい人 |
| 文字起こし一体型(オートメモ R/S) | 13,860円/19,800円(税込) | 無料は1時間/月。30時間/月は1,480円/月 | OPUS/flac(webアプリ経由でmp3として取り出し可能) | 録音から議事録まで1つで済ませたい人 |
| 文字起こし一体型(Plaud Note) | ¥27,500(税込) | 月300分が本体に付属 | 公式の製品仕様欄に記載なし | 会議が多く長時間ぶん必要な人 |
| スマホの録音アプリ+AIサービス | 0円 | 使うAIサービス側の料金 | 端末とアプリによる | まず試して判断したい人 |
価格はいずれも2026年8月21日時点で各社の公式ページに表示されていたものです。ソニーの公式ストアでは16GBの ICD-UX575F に「販売を終了しました」の表示があり、同シリーズで購入できるのは4GBの ICD-UX570F でした。
文字起こし前提でICレコーダーを選ぶなら、見る仕様は3つ
1. パソコンへ渡す経路が本体だけで完結するか
ICD-UX570Fシリーズの特長ページには「パソコンに直接つなげる。USBスライドを広げてパソコンとダイレクトに接続すれば、ケーブル不要で音声ファイルやデータを転送できます」と書かれています。仕様表の「パソコンインターフェース」も「Type-A High-Speed USB対応」です。ケーブルを探す工程が消えるのは、毎週の会議で効いてきます。
V-873の主な仕様ページにはUSB接続に関する記述を見つけられませんでした。外部メモリーは「microSDカード 2GB ~ 32GBに対応」と明記されているので、カード経由で取り出す前提なら問題ありません。買う前に、自分のパソコンに挿せる形かどうかだけ確認しておくと安心です。
2. 長時間モードほど、記録される帯域が狭くなる
これは仕様表を読まないと気づきにくい部分です。ICD-UX570Fシリーズの「周波数範囲」欄には、録音モードごとにこう書かれています。
- リニアPCM(44.1kHz/16bit):50Hz - 20,000Hz
- MP3 ステレオ(192kbps):50Hz - 20,000Hz
- MP3 ステレオ(128kbps):50Hz - 16,000Hz
- MP3 モノラル(48kbps):50Hz - 14,000Hz
長く録れるモードを選ぶほど、記録される音の範囲は狭くなります。V-873のほうは「128 kbps」「64 kbps mono」「8 kbps mono」の3段階で、最高が128kbpsです。
容量の心配で最低モードを選ぶ必要があるかというと、公式の最大録音時間を見るかぎりそうでもありません。4GBの ICD-UX570F でリニアPCMのまま5時間20分、MP3 192kbpsなら39時間45分録れると書かれています。2時間の会議なら、いちばん良いモードのままで収まる計算です。あとでAIに渡すなら、容量を節約する動機はほとんどありません。
3. 「どこまで拾えるか」を公式に書いている製品は意外と少ない
ICD-UX570Fシリーズの内蔵マイクは「ステレオ(Sマイクシステム)」と書かれていますが、集音距離の数字は仕様表にありませんでした。V-873はマイク構成そのものの記載を見つけられず、マイクジャック(φ3.5mm)の記述があるだけです。
対して一体型のほうは距離を明示しています。オートメモは「集音距離 5m」、Plaud Note は「最適録音範囲:3mまで」、上位の Plaud Note Pro は「最大5m」です。数字が書いてあるほうが選びやすい一方、書いていない製品が劣るという意味でもありません。距離の条件は製品より置き場所で決まる部分が大きいので、そこはWeb会議マイクのおすすめは?聞き取りやすさは値段より距離で決まるにまとめた考え方がそのまま使えます。
見る仕様が3つに絞れたら、あとは条件に合う実機を探すだけです。型番ごとの実売価格と在庫はAmazonでICレコーダーを探すと楽天市場でICレコーダーを探すの両方を開いて、手持ちの候補を並べて比べるのが早いです。
録ってからAIに渡すまでを、実際の手順に落とすと
ここまでの仕様がどこで効くのかは、手順に並べると分かりやすくなります。
- 会議の前に、録音モードを確認する。あとで文字起こしに回すなら、いちばん良いモードのままで構いません
- 机の中央ではなく、話す人に近い側へ置く。ステレオマイクでも、遠い声は遠いまま入ります
- 会議が終わったら本体をパソコンに挿し、音声ファイルをコピーする。ICD-UX570FシリーズならUSBスライドを広げて直接挿せます
- AI文字起こしサービスにアップロードする。ここで対応形式とアップロードできる長さの上限を一度だけ確認しておくと、以後は迷いません
4の工程で引っかかりやすいのがファイルの大きさです。リニアPCM(44.1kHz/16bit・ステレオ)は1秒あたり約176KBになる計算なので、1時間で600MB前後になります。MP3 192kbpsなら1時間あたり約86MBです。サービス側にアップロード容量の上限があるときは、この差がそのまま効きます。長時間の会議をリニアPCMで録るなら、渡す前にMP3へ変換する運用も現実的です。
Web会議をパソコン側で完結させたい場合は、そもそも本体を持ち出す必要がありません。会議アプリの録画機能から文字起こしに回す手順はZoom録画の文字起こしを無料でやる方法|Zoom側は有料プランが条件に分けて書いています。
正直な短所:一体型は「無料のまま」だと録音が7日で読めなくなる
オートメモの料金プランページには、お試しプラン(無料)の条件として文字起こし「1時間/月」、要約「1ファイル1回まで」、そしてデータ閲覧期間「7日間」と書かれています。有料のプレミアムプランは1,480円/月(初月無料)または14,800円/年(一括)で、文字起こし30時間/月、要約無制限、データ閲覧期間は無制限です。文字起こし時間の追加購入は10時間1,980円/50時間9,900円(税込・有効期限180日)と案内されています。
本体を13,860円で買っても、無料のまま使い続ければ7日を過ぎた録音データは閲覧の対象外になる、という設計です。ページには対象製品の購入者・登録者はお試しプラン利用中でも無期限で閲覧できる旨の記載もあるので、購入前に自分がどちらに当たるかは公式ページで確認してください。ここを見落とすと「本体代だけで済む」と思って買うことになります。
一体型のもう一つの前提はクラウドです。オートメモは「本製品で録音した音声は、クラウド上のオートメモAIが自動で文字起こし」「ご利用にはWi-Fiと、Google アカウント、Apple ID、Microsoftアカウントのいずれかが必要です」と明記されています。録音ファイルのサンプリング周波数は16000Hz・量子化ビット数16bit、形式はオートメモRがOPUS、オートメモSがflac(webアプリ経由でmp3として取り出し可能)。音声認識に振り切った仕様なので、音源そのものを高音質で保存したい用途とは方向が違います。
Plaud Note は本体¥27,500(税込)に文字起こし月間300分が付属します。より多く必要なら、1200分/月の年間プロプランと本体のセットが¥44,300(税込)で、本体単体との差額は16,800円です。会議が週に何本あるかで、この差額を払う意味があるかどうかが決まります。
普通のICレコーダー側にも短所はあります。V-873はMP3のみで最高128kbps、単4形電池2本で動く代わりに質量は77g(電池含む)です。ICD-UX570Fは約48gと軽く内蔵リチウムイオン充電式ですが、内蔵メモリーは4GBで、16GBモデルは公式ストアでの販売が終了しています。
よくある質問
Q. ICレコーダー本体だけで文字起こしまで終わりますか?
今回確認したソニーとOM SYSTEMの公式ページには、文字起こし・テキスト化の機能に関する記載を見つけられませんでした。テキスト化はAI文字起こしサービスか、一体型の製品が担う領域だと考えたほうが選びやすくなります。無料で使えるサービスの残り具合はAI文字起こし無料比較|定番が終了した今、無料で残っているのは4つに無料枠ごとまとめてあります。
Q. 追加の月額を払わずに文字起こしまで済ませられますか?
無料枠のあるAI文字起こしサービスを使えば、月あたりの時間が枠内に収まるかぎり追加費用なしで運用できます。どこまでが無料枠かは各社で差が大きいので、Notta無料プランの制限はどこまで?月120分より先に「1回3分」で詰まるのように、実際の枠の内訳を先に把握しておくと選びやすくなります。一体型のオートメモにも1時間/月の無料枠がありますが、前述のとおり無料のままだと閲覧期間の制限が付きます。
Q. スマホの録音アプリでは足りませんか?
多くの場面では足ります。専用機を検討する理由になりやすいのは、会議中にスマホを触れない、電池を通知やメモに使いたい、机の中央に置きっぱなしにしたい、といった運用上の事情のほうです。そもそも会議中にメモが追いつかないことが悩みなら、機材より先に手順を変えるほうが効く場合もあります。その話は会議でメモが取れない・聞き逃すのを止めるには|無料でどこまで残せるかに書きました。
まとめ
- ICレコーダーの公式仕様に文字起こしの記載はほぼ無い。選ぶ基準は「音をAIに渡すまでの手間」に置く
- 容量を惜しんで低いモードで録る理由は薄い。4GB機でもリニアPCMで5時間20分、MP3 192kbpsで39時間45分と公式に書かれている
- 一体型は本体代のほかに文字起こしの月額が要る。オートメモは無料だと1時間/月・データ閲覧7日間、Plaud Noteは本体に月300分が付属する